バタリアン・リターンズ 2008/09/27[Sat] ゾンビ観察

前回のバタリアン２の投稿より４ヶ月ぶり、
シリーズ3作目、｢バタリアン・リターンズ｣を取り上げてみます。

衝撃的な最終手段に驚きながらも際限ない終末観を示唆した1作目。
そこからの続きは描きようが無いだろうと言わんばかりの新たな着想で
描かれ(?)世界観を分けてしまった2作目。
そして現れた第三の戻ってきた生ける屍は、ゾンビ率は低いものの、
1作目のバタリアンイメージを踏襲しつつ、こじんまりとしながらも
なかなか見応えある素敵な作品でしたね。
戻って来たバタリアン。お帰り。

(以下にはバタリアンのネタバレが含まれています)
ゾンビ化の後、頭を破壊されようがバラバラにされようが
どんな状態になっても動き続け、
死の痛みを和らげる為に人間の脳みそを喰らうのが、
１作目バタリアンで描かれたエッセンス。
戻って来たバタリアンはそれらの設定を活かしつつも
更に新解釈を読み取らせ、お決まりのロマンス展開を見せるも
実はかなり世界観に広がりを持たせてくれた好印象の良品です。
これでゾンビ率も高ければ間違いなく大傑作だった風格。

帰って来たトライオキシンゾンビ怪進撃!!!

☆以下、ネタバレありです。

生前から刺激によって自身を保とうと伺える彼女の存在が
この作品を単なる続編に終わらせない素敵な所。
彼女は痛みによってかろうじて意識を保てる体であるようで
トライオキシンゾンビと化しながらも自我を崩壊しきらないと言う
特異性が描かれ新しい面白さを見出せる所でしょうか。
しかし人を喰らいたいという空腹感までは耐えられず、
気付けば体を傷つける事が唯一の空腹を紛らわす方法で
一生懸命空腹を耐えようと体中にスクラップで
傷を付けてみるのですが結局はダメで、
人間を襲ってしまうワケですが、
その体中に刺したスクラップの痛々しい姿に
意識を持って装飾した様子が見える所がまた
可哀相じゃないですか。“いわゆるゾンビ”の
生前の習慣を繰り返してしまうもの悲しいさに通ずる
悲劇のヒロインに相応しい様相にも思えます。
あぁ悲しき性故のトライオキシンゾンビ。

ロメロ監督の描き出したゾンビとの違いを際立たせた
トライオキシンゾンビは1作目からトライオキシンを大量に吸い込むか、
死後に浴びなければ即ゾンビ化する事はありませんでしたが、
本作ではとうとう噛まれても伝染しゾンビ化する現象を描き、
実は｢ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド｣は実際の事件の映画化と
言う部分を思い出させる要素とも取れますが、すでにここまで来ると
そんな事なお構いなしで進んでいる気もしますね。
バタリアンゾンビはロメロゾンビとの区別化が良い所でもあるので、
その辺は両論ありそうです。

本作のゾンビ達のこんな姿でも動けますと言わんばかりの存在感には
なかなか感動しました。バタリアン様々。
｢背骨を引っこ抜いても立ってられるんです〜｣(アンチ原西笑)
前２作のバタリアンやブレインデッドでも
異形のゾンビは見られますが、本作の変形ゾンビの
描き方は一線を画する印象もあり、素晴らしい所です。
走るゾンビに同じく、ここまでしたらもうゾンビじゃないと
言われそうな雰囲気もありますが、
個人的にはゾンビの発展と可能性に改めて敬服。
この辺は異様に好きな｢STACY｣に受け継がれる凄まじさでしょうか。
すげぇ、変形ゾンビ。

で、もってラストに登場する肉電池ゾンビもいい!!!
兵器として使うと言う話はよくありそうですが
私はさほどゾンビ作品を見ていないせいもあってか
具体的に考えるとゾンビは武器なんか使いこなせないだろうし
兵器としては噛み付いて喰らって伝染させるだけかな?と
思っていましたが目から鱗。そうでした、トライオキシンゾンビは
頭脳派ゾンビ。武器も使いこなせそうで兵器利用しやすそうです。
うまく操る事が出来ればの話ですけれど、興味深かったです。
しかし外骨格肉電池とは気が付きませんでしたよ。
すげぇ、肉電池ゾンビ。

そして、
行き場のなくなった彼氏と彼女は手に手を取り２人で焼却炉に入り
灰となる事を決意。煙となって一つになれたわけですね。
この施設は焼却システムがしっかりしている様で(?)
バラバラ死体をガンガン燃やしても煙は外部に漏れる心配はなく
物語はすっぱりと終幕。この物語は終末観よりは
悲劇を見届ける雰囲気なので、これはこれで◯。

そいうわけで、なかなか素晴らしい発展を見せてくれた
バタリアン・リターンズよ、今一度リターン!!

次の｢バタリアン４｣でお会いしましょう。